増田研「宇宙・航空システム研究室」

研究・教育活動について

概要

当研究室では、宇宙開発におけるシステム取り纏めの実経験に基づき、専門分野である宇宙機の誘導制御技術、飛行力学・軌道力学を踏まえ、宇宙・航空分野における大規模システム開発の研究を進めています。 事例としては、宇宙から地球に帰還する有翼型再突入システム開発、無人航空機を利用したシステム提案を実施しています。 このシステム開発は宇宙・航空分野に留まらず、他の工学分野、更には他の事業分野や社会システムでも通じるものと考えています。

社会貢献の一環として、これらの研究成果を地域の小学生向けの科学教室に展開し、科学技術への興味喚起に努めています。

研究活動紹介

研究テーマ:高運用性有翼型再突入機開発

宇宙開発事業団(NASDA)が開発を目指した日本版無人スペースシャトル(HOPE:H-II Orbiting Plane)の再突入誘導制御系設計、及びシステム設計に携わった経験を活かし、 リフティングボディ型再突入機の開発研究を進めています。
 今後、地球低軌道での民間主導の活動が活発化することが考えられ、手軽に低軌道から地上に物資を回収する手段が求められるようになります。 少量の貨物を頻繁に回収する運用性の高い小型有翼型再突入機による宇宙地上間輸送システムは宇宙開発・宇宙空間利用の促進に大きく貢献するものと考えます。

研究テーマ:無人航空機開発と利活用システム開発

静岡県には長年に亘って無人航空機開発に従事されてきた多くのエンジニアがいらっしゃいます。 更に事業の多様化を目指し、航空宇宙関連製品の製造を手掛けたいと考える技術力の高い企業も多くいらっしゃいます。 これは他県には無い、宝物です。
 それらの方々と無人航空機開発と利活用システム開発を進めており、静岡独自の無人航空機とそれを利活用する社会インフラやエンターテイメントを静岡から発信し、静岡県を無人航空機の拠点とすることを目指しています。

研究テーマ:龍勢の工学的解明

「龍勢」はロケット型打上げ花火であり、県内では藤枝市朝比奈地区や静岡市草薙地区に伝承されてきました。 1600年の関ヶ原の戦いにおける狼煙としての使用や徳川家康公の駿府城における打上げ観望の記録があり、静岡県無形文化財に指定されています。
 この長年に亘り伝承されてきた「龍勢」の打ち上げを初めて観た時、多くの工学的工夫が盛り込まれており、今日の工学製品開発における最適化設計に通じると思いました。 そこで飛翔の仕組みを工学的に解明することを通じて、学生のエンジニアリング・センス修練と龍勢伝承への貢献を目指した活動を進めてきました。
 朝比奈・草薙の各龍勢保存会と煙火会社の御協力を得て、龍勢に搭載したビデオカメラを含む計測機器にて飛翔データを取得し、姿勢安定や飛翔経路を工学的に分析しています。 また、打ち上げの原動力である「吹筒」(黒色火薬エンジン)の推力計測を初めて実施し、吹筒の作り・形状と発生推力の関係を解明しています。
 飛翔の安定性を検証するために考案した「ミニ龍勢」(全長1.8m、実物の1/10程)を地域の小学生向け科学教室に活かしています。

教育活動紹介

藤枝市宇宙科学教室(2016年度~2019年度)

藤枝市が市内小学生向けに開講していた宇宙開発をテーマにした科学教室を支援しました。
 2016年度には、龍勢の工学的解明の研究結果を地元朝比奈第一小学校の全校生に説明し、龍勢を通じて地元の自慢を持ってもらい、龍勢をやってみたいとの気持ちを引き出すことに寄与しました。
 2017年度から2019年度には、藤枝市開催の宇宙科学教室にてミニ龍勢(全長1.8m、実物の1/10程)の製作・打ち上げを通じて、地元の伝統文化と飛翔の仕組みの理解を進めてきました。
 これらの活動に対して、藤枝市より2020年度「藤枝げんき大賞(教育)」を贈呈して頂きました。

藤枝市少年少女発明クラブ(2020年度~)

「藤枝市少年少女発明クラブ」は藤枝市が小学生達の科学探求心育成を目的に設立されました講座です。このクラブの会長となり、その活動を支援しています。
 藤枝市内在住の多様な分野の専門家を中心に指導員となって頂き、市内高校生の協力も得て、年10回程の講座を開催しています。 講座は科学技術の理解と興味喚起を図るとともに、藤枝への自慢を持たせることも目指しています。